パタカラとはお顔の表情筋を鍛えるための医療器具です。表情筋を鍛えると、噛む・話すなどのお口の機能だけでなく、しっかり噛んで食べて、体に栄養を吸収する機能も向上させられます。
表情筋は、歯並びにも大きく影響します。歯は舌の力で内側から押されており、それを表情筋が外側から抑えることによって歯並びが維持されているのです。もし表情筋が衰えたり舌の力が弱くなると、内外からの力のバランスが崩れて歯並びが悪くなってしまいます。
また、パタカラ治療は全身の健康にも効果を示しています。お口の周りを鍛えることで、高齢者の認知症や寝たきりの予防につながったり、アトピーやダウン症の改善などが報告されています。
遠野市では保育園児・幼稚園児・小学校低学年の児童がパタカラを使用。小友小学校では平成20年より継続して1〜4年生を対象にパタカラの効果を検証しています。
高齢者施設でも、パタカラ治療を行っています。高齢者施設「長寿の森・吉祥園」では特に顕著に症状の改善が見られました。寝たきり状態の患者さまが車椅子で移動できるまでになったのです。さらにオムツを使用していた方は不要になり、被験者全体のほとんどの人の何らかの症状が改善しました。
遠野市には11時と15時の1日1~2回、パタカラを使用している保育園があります。ある園児は交叉咬合(歯の噛み合わせが横にずれている状態)だったものが、パタカラを使用して1年後には正常な噛み合せに戻っていました。
パタカラは直接的に歯並びを改善するわけではありませんが、表情筋のバランスを改善し、結果的に歯並びを正常な状態に近づける働きがあります。
この保育園では、使用後のパタカラを園児が自分で水洗いして乾燥させ、清潔に保管します。また虫歯予防のために食後の歯磨きだけでなく、フッ素でうがいをしています。このように集団生活の中でパタカラ治療を行うことで、自分のものを自分で管理する習慣づくりや、お口の健康への意識を高めるのにも、間接的なメリットがあります。
当院の81歳の男性の患者さまは、パタカラ治療で全身の状態まで改善されました。この患者さまは過去に脳梗塞で入院した経験があり、治療に対する一番のご希望は、パタカラで全身の状態を改善したいということでした。
下の左側の写真は、来院当初のお口の中の状態です。重度の歯周病に加え、被せ物も合っていませんでした。長期間、噛めない状態が続いていたので、噛み合わせや歯並びも乱れていました。
パタカラ治療と併用して歯科治療を行い、被せ物を新しくして噛み合わせも治しました。約半年後には右側の写真のようなお口の状態にまで回復し、患者さまは「なんでも噛める」とおっしゃってくれました。歯周病もご自身の丁寧なブラッシングにより、症状が改善されてきています。
パタカラを4か月ほど実践したあとの患者さまの様子を見ていきます。お顔の肌ツヤやハリが戻ってきて、初診時には杖がないと立てずにいましたが、杖に頼らずご自身で立つことができるようになりました。しかし、首が少し前に倒れ、前かがみになっています。
その後、2か月経過(パタカラ治療を開始して6ヶ月)した後の写真です。前かがみな状態も改善されて顔の色つやも改善されています。発音もハッキリし、お話しやすくなっている印象でした。
この患者さまは脳梗塞を患い、1年間のリハビリを終えた頃は、杖をついて立ち上がり歩いていました。初診から4ヶ月経過した頃(左の動画)は、歩き方にもたどたどしさがありましたが、初めて当院に来院された頃より良い状態になりました。この頃は1日4回以上、四六時中パタカラをしてくださっていたとのことです。
その2ヶ月後(右の動画)、さらに歩き方にも変化が見られました。たどたどしかった歩行が、しっかりと歩けるようにまで改善したのです。
パタカラ治療を開始して1年以上経過した頃には、自転車に乗れるまで回復しました。
初診から4ヶ月後の歩き方
初診から6ヶ月後の歩き方
なぜパタカラ治療は、姿勢の改善や認知症の予防に効果を示すのでしょうか。それはパタカラを使用すると脳の血流量を増やし、脳を活性化させるからです。下の写真は光トポグラフィーを利用した画像で、パタカラの使用前・使用中・使用後の状態を示しています。
「Mパタカラ使用中」の写真では、被験者の前頭葉部が赤く反応しています。これは脳への血流量が増えていることを意味しています。
右の写真は脳のMRI画像です。色が付いている部分は脳の血流量が増えている部分です。パタカラを装着して1分30秒ほどで、脳全体に刺激を与えることができるのです。
パタカラ治療のお口の中への効果としては、歯並びの改善などがあります。そのほかにも、表情筋が鍛えられることで、口元やお顔周りの見た目にも変化があります。表情筋を鍛えることによってたるみが改善され、血行を促進するので、肌の色つやが良くなり見た目の若返りが期待できるのです。
高齢化が進む日本では、認知症や寝たきりを予防して若さを保つために、パタカラが役に立つことはまちがいないでしょう。1日数分の使用で効果を発揮してくれるため、誰でも気軽に使用でき、今後ますます活用されていくと考えます。
ご興味をお持ちの方は、ぜひ当院にご相談ください。